商品撮影は、商品の魅力を最大限に引き出すための重要なプロセスです。
カタログ・ECをはじめ、撮影に長年携わってきたカメラマンとして、効果的な商品撮影のコツや流れをご紹介いたします。
商品撮影のコツ
商品撮影の成功は細部に宿ります。プロのカメラマンが教える、効果的なライティング、構図の工夫、そして背景の選び方など、商品の魅力を最大限に引き出すコツをご紹介いたします。
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大切なのは「仕上がり」をイメージすること
商品撮影においてもっとも重要なのは、単なる商品の外観をとらえることではなく、その商品が持つイメージを的確に表現することです。
カメラマンとしての腕前が試されるのは、商品の魅力や特性を最大限に引き出し、見る人に強い印象を与えるビジュアルを創り上げることです。
例えば、シンプルなアクセサリーであれば、その繊細さや上品さを強調し、生活の中での使い方や雰囲気を感じさせる背景や照明を工夫します。
これにより、単なる写真以上のメッセージが伝わり、購買意欲を高めることができるのです。
商品の特徴をとらえる
商品撮影において、商品の特徴を的確にとらえることは最も重要な役割のひとつです。
まず、「商品が持つ独自の魅力や機能性をどのように表現するか」を考えてみましょう。
素材の質感、色彩、形状など、商品の特性を細部にわたって観察し、それを最大限に引き出すライティングやアングルを工夫します。
さらに、背景や小道具の選択も重要です。商品の魅力を際立たせるために、シンプルで洗練された背景を選び、視覚的な雑音を排除することが求められます。
ユーザー目線で、商品に込められた価値を直感的に感じ取れるような1枚を目指しましょう。
商品に合わせた撮影パターンを最初に決めておく
商品撮影におけるカットの種類は多岐にわたります。それぞれのカットには独自の目的と魅せ方があり、商品の特性に応じて使い分けることが重要です。
撮影をスタートしたあとでどのような写真を撮るのか悩むより、撮影前にカット割りを決めておきましょう。商品数が多い場合、スプレッドシートなどで、撮影カットリストを作成しておくことをおすすめします。
スプレッドシートには品番などをあわせて記入することで、撮り漏れをチェックすることもできます。
以下に、代表的なカットの種類を紹介します。順番に見ていきましょう。
全体像(Wide Shot)
商品全体を一目で把握できるように撮影する基本的なカットです。商品の形状や大きさを伝えるのに役立ちます。
アパレル撮影では、前(前面)、後ろ(背面)の2パターンを撮影することが多いです。
クローズアップ(Close-Up)
商品のディテールを強調するために、特定の部分を大きく写すカットです。「ディティール」「ディティールカット」といった言い方もします。
テクスチャーや、細部の品質を見せたい場合に有効です。
マクロ撮影(マクロショット・Macro Shot)
極めて近い距離から撮影することで、ミクロの世界を表現します。精密機器などの小さな商品に適しています。特殊な機材(レンズ・フィルターなど)が必要になることが多いです。
スケールショット(Scale Shot)
商品のサイズ感を伝えるために、他の物と一緒に撮影するカットです。特に、Amazonや楽天などのオンライン販売(EC撮影)で役立ちます。必ずしもあった方がいいというわけではないので、そこまで気を使わなくても大丈夫です。(サイズの比較が必要な商品の場合、撮影後のデザインなどでタテヨコの大きさを記載するというやり方もあります)
イメージカット(環境ショット・Environmental Shot)
商品をその使用環境や関連する背景と一緒に撮影するカットです。おもに「イメージカット」と呼ばれるものです。「白背景での撮影」と「イメージカット」は、商品撮影における2大ジャンルであると言えます。
HPでのキービジュアルなどにも使用されるカットで、商品のコンセプトや雰囲気を伝えるのに適しています。
ライフスタイルショット(Lifestyle Shot)
イメージカットに含まれるものですが「商品が実際に使用されるシーン」を再現したカットです。消費者が商品を使っている様子をイメージしやすくなります。特に使用方法が難しいものや、複数の使用方法がある商品については、マストで撮影した方がいい場合もあります。
アクションショット(Action Shot)
商品が動いている様子や、動作中の様子をとらえたカットです。例えば、スポーツ用品や電子機器など、使用中の性能を見せるのに効果的です。
360度ショット(360-Degree Shot)
商品を全方向から見せるために、回転させながら撮影するカットです。
インタラクティブなウェブ表示に最適ですが、表示させるためには専用のアプリなどを利用する必要があります。
これらのカットを効果的に組み合わせることで、商品の多面的な魅力を引き出し、消費者に強い印象を与えることができます。
商品撮影に必要な機材とは?
商品撮影には、適切な機材を揃えることが重要です。以下に、基本的な機材とその用途を紹介します。
最初から全部の機材を揃えるのは難しいかもしれませんが、参考までに見ていきましょう。
カメラ(Camera)
基本的には、デジタル一眼レフカメラ(DSLR)またはミラーレスカメラを使用します。
高品質な画像を撮影するために必須です。交換レンズが使用できるため、さまざまな撮影シチュエーションに対応できます。
撮影する内容によっては、スマホでも問題ない場合があります。ただ、スマホの場合はどうしても一眼レフカメラやミラーレスに比べて「できないこと」の方が多いため、我々のような撮影スタジオではスマホを使って撮影することは(特殊な事情をのぞき)ほとんどありません。
レンズ(Lenses)
ズームレンズ(Zoom Lens)
焦点距離を変えて撮影できるレンズです。立っている場所を変えずに、クローズアップにしたり、ワイドにしたり、さまざまな「画角」で撮ることができます。
標準レンズ(Standard Lens)
汎用性が高く、多くのシーンで使用可能です。
マクロレンズ(Macro Lens)
近接撮影に適しており、小さな商品のディテールをとらえるのに最適です。
望遠レンズ(Telephoto Lens)
遠くから商品を撮影する際に使用。「形の歪み」を極力少なくすることができます。また、背景をぼかすことができるため、屋外でのモデル撮影でも多く用いられます。
照明機材(Lighting Equipment)
①ソフトボックス(Softbox)
柔らかい光を作り出し、商品の影を減らします。
②LEDライト
調光可能で、色温度を調整できるため便利です。
③リフレクター(Reflector)
光を反射させ、影を明るくするのに使用。
三脚(Tripod)
カメラを安定させるために使用します。
長時間露光やブレを防ぐのに役立ちます。
背景(Backgrounds)
①無地の背景紙(Seamless Paper)
商品を引き立てるために使われます。
白や黒、グレーなどが一般的です。
②テクスチャードバックグラウンド(Textured Backgrounds)
商品に合わせた雰囲気を出すために使用。
テーブルや台(Table or Stand)
商品を置くための安定した台やテーブル。「撮影台」とも呼ばれます。高さや角度を調整できるものが便利です。
アクセサリー(Accessories)
①クランプ(Clamps)
商品や背景を固定するのに使用。
②ディフューザー(Diffuser)
光を柔らかくし、影を軽減するための布やプラスチック製の板。
ソフトウェア(Software)
写真編集ソフトウェア(Photo Editing Software)
Adobe PhotoshopやLightroomなど、撮影後の編集に必要です。
これらの機材を適切に使いこなすことで、高品質な商品写真を撮影することができます。
それぞれの機材の特性を理解し、商品の特性や撮影シーンに合わせて選択することが成功の鍵となります。
商品撮影の流れについて
商品撮影の手順について、以下のステップで説明します。
1.背景の準備
背景紙や背景布
無地の背景紙や布を使用して、商品が際立つようにします。
白、黒、グレーが一般的ですが、商品の特徴に応じて他の色も使用できます。
2.照明の調整
ライティング
照明を調整し、商品の影が出ないようにします。
ソフトボックスやリフレクターを使用して、光を柔らかくすることが重要です。
3.撮影
様々な角度からの撮影
全体像の撮影
商品の全体像を撮影します。
4.撮影後の処理
①写真の選別
②確認と選別
撮影した写真を確認し、ベストショットを選びます。
5.最終確認
最終チェック
編集後の写真を再度確認し、問題がないかチェックします。
これらの手順を踏むことで、商品撮影がスムーズに進み、質の高い写真を得ることができます。
商品撮影のライティングについて
商品撮影におけるライティングは、商品の魅力を最大限に引き出すために非常に重要です。
以下に、基本的なライティングの概念とテクニックを紹介します。
1. ライティングの基本概念
a. 光の種類
自然光
窓から入る太陽光。
柔らかい自然な照明が得られますが、時間帯や天候に左右されます。
人工光
スタジオライト、LEDライト、フラッシュなど。
コントロールしやすく、一貫した照明が可能です。
b. 光の質
硬い光(ハードライト)
シャープな影を作り出します。ディテールや質感を強調するのに適していますが、商品によっては影が強すぎることがあります。
柔らかい光(ソフトライト)
柔らかく拡散された光。影を軽減し、均一な照明を提供します。
c. 光の方向
フロントライト
被写体の正面から当てる光。
影が少なく、全体を均一に照らしますが、立体感が不足することがあります。
サイドライト
被写体の横から当てる光。
立体感やテクスチャを強調します。
トップライト
被写体の上から当てる光。
影が強くなるため、使用には注意が必要です。
バックライト
被写体の後ろから当てる光。
シルエットを強調し、ドラマチックな効果を生み出します。
2. ライティングの基本テクニック
a. キーライト(Key Light)
メインライト
被写体をおもに照らす光源を「メインライト」と呼びます。
位置や角度を調整して、商品の形状やディティールを際立たせます。
b. フィルライト(Fill Light)
補助光
キーライトによって生じる影を和らげるための光のことです。
キーライトよりも弱い光を使用します。
c. バックライト(Back Light)/リムライト(Rim Light)
背景光
被写体の背景を照らし、被写体と背景を分離します。
立体感や奥行きを強調します。
d. サイドライト(Side Light)
側面光
被写体の側面から当てる光。
立体感を生み出し、商品のテクスチャや形状を強調します。
3. 特定の撮影シチュエーションのライティング
a. 小物やアクセサリーの撮影
マクロレンズとソフトボックスを使用して、細部のディテールを強調します。
リフレクターを使って影を軽減し、均一な照明を提供します。
b. ファッションアイテムの撮影
全体像とディテールショットを組み合わせる。
サイドライトやフィルライトを使用して、立体感を出します。
c. 食品の撮影
ナチュラルな照明を使用し、フレッシュさを強調します。
ディフューザーを使って柔らかい光を作り出し、影を和らげます。
これらのライティングの基本概念とテクニックを理解し、実践することで、商品撮影におけるライティングを効果的に行うことができます。
商品撮影の構図
商品撮影において、構図は商品の魅力を効果的に伝えるために非常に重要です。
以下に、商品撮影でよく使われる主な3つの構図を紹介します。
1. 三分割法(Rule of Thirds)
三分割法は、画像を水平と垂直に三等分して9つの部分に分け、その交点に被写体を配置する構図です。
この方法は視覚的にバランスが取れた写真を撮影するのに役立ちます。
利点
視覚的なバランス
被写体を画面の中心からずらすことで、動きや視線の誘導が生まれ、視覚的に興味深い写真が撮れます。
自然な注目点
観る人の目が自然に交点に引き寄せられるため、商品が目立ちます。
使用例
商品を中心から少しずらして配置し、背景や周囲のディテールを強調する。
例えば、時計やジュエリーなどの小物を撮影する際に効果的です。
2. 中心構図(Central Composition)
中心構図は、被写体を画像の中央に配置するシンプルな構図です。
この方法は、シンメトリーやバランスを強調したいときに使用します。
利点
<強いフォーカス>
被写体が中心にあるため、視線が直線的に集中し、商品のインパクトが強くなります。
<シンプルで効果的>
余計な要素が少ないため、商品そのものが際立ちます。
使用例
単一の商品やシンプルな構成のアイテムを撮影する際に効果的。
例えば、スマートフォンや化粧品のボトルなど。
3. 対角線構図(Diagonal Composition)
対角線構図は、被写体を対角線に沿って配置する方法です。
この構図は動きやダイナミズムを感じさせるため、視覚的に引き付ける写真が撮れます。
利点
動きと流れ
対角線に沿った配置は視線を引き付け、動きや流れを感じさせます。
ダイナミズム
構図に躍動感を与え、商品をより魅力的に見せます。
使用例
長細い商品や、動きのあるシーンを撮影する際に効果的。
例えば、ファッションアイテムやスポーツ用品など。
これらの構図をうまく使い分けることで、商品撮影の品質を向上させ、商品の魅力を最大限に引き出すことができます。
撮影する商品の特性や狙いに応じて、最適な構図を選択することが重要です。
編集を行う
撮影だけでなく、撮影後の編集作業も重要なプロセスです。
当スタジオでは、明るさと色調整は無料で行っております。
写真編集でおもに必要なことは、以下の3つです。
1. 露出とコントラストの調整
露出(Exposure)
写真の明るさを調整することで、適正な明るさを確保します。
過剰に明るい(オーバーエクスポーズ)または暗い(アンダーエクスポーズ)写真は、商品が見えにくくなります。
コントラスト(Contrast)
明るい部分と暗い部分の差を調整し、写真に深みを持たせます。
適切なコントラストは、商品の立体感やディテールを強調します。
2. 色調補正
ホワイトバランス(White Balance)
照明の影響で色が偏った場合、ホワイトバランスを調整して自然な色合いにします。
正確な色再現は、商品が実際に見たままの色であることを保証します。
色飽和(Saturation)と色相(Hue)
色の鮮やかさや色味を調整します。
過剰な色飽和は避け、自然な見た目を維持することが重要です。
3. シャープネスの調整
シャープネス(Sharpening)
画像のエッジを強調して、商品のディテールをクリアにします。
過度なシャープネスはアーティファクトを生む可能性があるため、適度に調整することが必要です。
ノイズ除去(Noise Reduction)
高感度で撮影した写真などに見られるノイズを軽減し、クリーンな仕上がりにします。
これらの基本的な編集ステップを行うことで、商品の魅力を正確に伝えることができ、プロフェッショナルな仕上がりの写真を作成することができます。
注意点について
オフィスや自宅で商品撮影を行う際に注意すべきおもな3つのポイントについて、具体的なアドバイスを以下にまとめました。
セットの注意点
背景の選定
商品が引き立つようなシンプルな背景を選びます。
無地の白や黒の背景紙が一般的ですが、商品の色やテーマに合わせた背景を使うと効果的です。
クリーンなセットアップ
撮影セットは常に清潔に保ちます。
商品や背景に埃や汚れがついていないかを確認し、必要に応じて掃除します。
適切な小道具の使用
商品の特性を引き立てるために、小道具を使用します。
ただし、過剰に使用すると商品の主張が薄れるため、バランスを考慮して配置します。
これらの注意点を守ることで、自宅での商品撮影がスムーズに進み、プロフェッショナルな品質の写真を得ることができます。
セットの注意点
自然光の利用
自然光を利用する場合は、窓際で撮影することがおすすめです。
ただし、直射日光は避け、レースカーテンなどで光を拡散させて柔らかい光を作り出します。
照明の配置
ソフトボックスやディフューザーを使用して、均一な光を作ります。
光源が一方向だけに偏らないように、複数の照明を使用するのも効果的です。
1. 映り込みの注意点
反射の管理
ガラス製品や光沢のある商品の撮影では、カメラや周囲の物が映り込まないように注意が必要です。
黒い布や紙を使って不要な反射を防ぐことが効果的です。
カメラ位置の調整
カメラの位置を調整して、不要な映り込みを避けることができます。
低い角度や斜めから撮影することで、映り込みを最小限に抑えることができます。
偏光フィルターの使用
偏光フィルターをカメラに取り付けることで、反射光を制御し、映り込みを減らすことができます。
影の管理
影が強く出過ぎる場合は、リフレクター(反射板)を使って影を和らげることができます。
白いボードやアルミホイルでも代用可能です。
あとがき
今回はカタログやECにおける「商品撮影」についての詳細をまとめました。
自社で撮影を行うにしろ、外部のフォトグラファーに依頼するにしろ、撮影に関する知識は少しでもあった方がいいでしょう。
ジャンルを問わず、写真や動画の良さは売上に直結します。わかりやすく、クオリティの高いビジュアルが商品の販売には不可欠です。
撮影についてお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談いただければと思います。