撮影業界にはさまざまな専門用語がありますが「横位置」「縦位置」とはいったいどういう意味なのか?プロフォトグラファー(カメラマン)はどういった時に使い分けをしているのか?といった質問を時々頂戴します。本稿では「横位置」「縦位置」についての基本的な解説と、それぞれどのような使用用途があるのかについて、解説いたします。
カタログやEC撮影における「横位置」写真とは?
プロの商業撮影に使用するカメラ(一眼レフカメラ)やミラーレスカメラの場合、通常通りに本体を構えると「横位置」の状態になります。
写真が得意、苦手という点に関係なく、おそらくみなさんも一度はカメラを使用したことがあると思いますが、その状態でシャッターを切ると、左右方向に長い写真が撮影できます。
特にECショッピングサイトやランディングページに掲載する商品写真(化粧品や食品パッケージ本体などを含む)の場合、多くのケースで横位置の写真が求められます。
PC、タブレット、スマホといった画面サイズを問わず、WEBサイトは基本的に縦方向へスクロールするため、横位置写真の方がレイアウトしやすいためです。
カタログに使用する写真の場合、横に幅広く使用するレイアウトや、見開き(2ページにまたがった写真)の時には横位置で撮影することが多いです。
横位置写真に感じる、安定感や安心感
横位置写真について、WEB時代だからこそ使いやすいという理由を挙げましたが、もう1つのメリットがあります。人間は横位置の写真に対して、無意識のうちにどっしりした安定感や安心感を感じます。そのため、ユーザーに対して、商品に対する安心感を与えることができるのです。
このことが理由のすべてではありませんが、料理写真の多くは横位置で撮影されています。料理を盛ったお皿や鍋などが横長になることが多い、ということもありますが、横位置写真においては「おいしい」「あったかい」といった料理に対するプラスの印象が自然と強まります。
EC撮影における「縦位置」写真とは?
それでは、縦位置の写真はどのような時に求められるのでしょうか。
商業撮影において、もっとも需要があるのはファッション撮影です。
人物撮影は基本的に縦にカメラをかまえて撮るため、縦位置は英語でポートレート(Portrait / Portrait Position)とも呼ばれます。
EC撮影の中で、もっともわかりやすい事例サイトはZOZOTOWNでしょう。
縦位置の写真であれば上半身、全身ともに商品+モデルの顔を入れて無理なく撮影することができます。
ZOZOTOWNで注意しなければならないのは、原則としてサイト上にはすべて縦位置の写真を掲載されている点です。スニーカーなど横長の商品を撮ると天地が少し余ってしまうのですが、余白も計算に入れた上で撮影を行う必要があります。
縦位置写真が与える印象と、カタログ撮影における縦位置とは?
縦位置写真は、見る人に緊張感を与える「かっこいい」印象を与えることができます。商品撮影に限らず、建物の高さや長さを強調したい時には縦位置の撮影が向いていると言えるでしょう。
また、カタログやパンフレットは一般的に縦長のページが多いため、必然的に縦位置の写真が多く使われる傾向にあります。カフェやレストランなど料理のグランドメニューも、表紙写真などは主に縦位置になります。
横位置で撮影する場合と異なり、余白の使い方に工夫が必要になること、また縦位置の方がレンズを歪み(パース感)を感じやすいことから、横位置写真の撮影とは少し異なるテクニックが求められます。
「正方形フォーマット」という写真も?
縦位置写真、横位置写真だけではなく、インスタグラムでおなじみの正方形(スクエア)フォーマットという形式もあります。文字通り、縦と横の長さが1:1の写真のことで、もともとハッセルブラッドなどのカメラが6×6(ロクロク)という正方形フォーマットだったことから、現在もそのなごりとして正方形の写真を撮るモードが一部の(スマホ、ミラーレスを中心とした)カメラには残っています。
正方形だと、なんとなくおしゃれにかわいく見えるのが不思議ですね。最近では、正方形の写真が撮れる、ましかくチェキも販売されています。
こうした「おしゃれ」「かわいい」といった理由以外に、正方形フォーマットは縦・横いずれの方向にもトリミングしやすいため、広告業界で広まったという説もあるようです。
縦位置写真、横位置写真の「トリミング」は別途費用になることも?
クライアント各社様から時折、写真をトリミングして納品してほしいというリクエストをいただくことがあります。つまり、もともと縦位置で撮った写真の周辺をカットして横位置にしたり、横位置の写真を縦位置にしたりといったご要望です。また、時にはインスタ用にましかくにしてほしいというご相談もあります。
ただ、このトリミング作業については比較的工数がかかるため、撮影スタジオによっては別途費用が発生する場合も多いです。
使用用途によって、事前に相談していただいた方が望ましいかと思います。
縦位置写真と横位置写真、それぞれの用途に合わせた撮影を
今回は、縦位置写真、横位置写真について、それぞれ解説させていただきました。もっとも重要なのは、使用用途に合わせたフォーマットで撮影を行うことです。
特にEC写真は撮影カット数も膨大な枚数になりやすいため、セレクト作業の工数をいかに減らすかは重要な問題です。
写真に関するちょっとした知識があると、再撮影のリスクもぐっと少なくなります。より良い商品撮影、モデル撮影を目指して、日夜業務に励んでいただければと思います。